自衛官を辞めたいけれど、なかなか辞めさせてもらえない」と悩む自衛官はとても多く、その背景には法律と、上司からの強い引き止めがあるからといわれています。特殊な任務内容の自衛隊は、他の公務員よりも辞めることが難しいのです。

しかし、自衛官だからといって退職できない訳ではありません。退職のタイミングや方法を理解していれば退職することは可能です。

ここでは自衛隊の退職に関わる法律と、退職の手続きの際にどのように引き止められているのかを紹介し、自衛隊が退職するために一番確実な方法について解説します。

自衛隊はパワハラだらけ?辞めたい相談が多いです

自衛隊の自殺率は国民平均の1.5倍

パワハラは社会問題となっていますが、自衛隊も例外ではありません。パワハラに限らず、自衛官の自殺率の高さは深刻な問題となっています。そのため厳しい任務内容である自衛隊を辞めたいという相談も多いです。

自衛官の自殺率について以下のような調査報告があります。

自衛官の自殺率は国民平均の1.5倍、法務・農水も多い 国家公務員調査
人事院職員福祉課はこのほど、01年度から08年度までの府省別の自殺者数をはじめて明らかにした。防衛省・自衛隊は独自に公表しているため、これで国家公務員の自殺に関する全体像を組織別に比較できることになる。日本人の同期間の平均は、10万人あたり27.4人。これを超えていたのは、特別職である陸上自衛官(37.0人)、海上自衛官(36.3人)、防衛省事務官(28.2人)の3組織だった。直近5年では、自衛官の自殺率が国民平均を45%も上回っていた。一般職では法務省(27.2人)、農水省(25.4人)が多かった。鳥インフルエンザや耐震偽装問題など、世間を揺るがす問題が発生した年は関連省庁で自殺率が上がっている傾向が見られた。
引用元:https://www.mynewsjapan.com/reports/1317

自衛隊は災害時の被災地では先陣を切って活躍しており、多くの国民からの厚い信頼があります。なぜ、そのような組織で過度なパワハラが発生しやすいのでしょうか。

自衛隊のパワハラが深刻化する理由

自衛官の多くは共同生活をしており、職場とプライベートの区別がありません。そのため職務や人間関係のストレスを発散することができず、ストレスはどんどん蓄積していきます。閉鎖的環境下でパワハラが発生しても、逃げ出すことはできず状況は悪化しやすくなります。

また、部隊の異動が少ないため部隊内の雰囲気が固定化されやすく、本来の力関係とはかけ離れた過度な指導や教育が常習化してしまうことで、パワハラに気付くことが出来ません。そのためパワハラも発生しやすくなります。

厳しい職務であるという概念があり、自衛隊という唯一無二の組織内では、状況の異常性に気付けずに身体的、精神的苦痛から自殺に追い込まれてしまう人もいます。しかし、中には苦痛で退職したくても退職できずに悩む人も多いのです。

そして、自衛官が退職を申し出ても退職が出来ない理由の一つは「辞めさせてもらえない」と引き止めにあうことです。どれだけやりがいのある仕事でも精神的に病むまで続ける必要はありません。そのような職場は辞めて正解ですし、辞めるべきでしょう。

自衛隊は辞めさせてくれない?引き止めは違法なのか徹底解説

一般的に自衛隊は辞めにくいと言われています。その理由の多くは「引き止め」にあうからです。また、自衛隊には「自衛隊法」という法律があり、退職についても法的に定められています。

しかし、自衛隊という特殊な職業であったとしても、強い引き止めは違法となる可能性があります。

それでは実際どのような引き止められ方をされて、なぜ違法になるのかを詳しく解説していきます。

自衛隊の退職引き止めに合った事例を3つ紹介

実際に引き止められたため、辞められないという相談は以下のようにあります。

自衛隊が辞めれない。説得するための口実を教えてください。曹候補生(空)です。窮屈な規則&仕事にやりがいがない、人間関係のストレス、などから退職を決意しました。
やりたい仕事もあります。

「他に、やりたい仕事があり、3月いっぱいで退職したいです。集団生活と厳しい規則があわずストレスでまた普通の生活に戻りたいという理由もあります。自衛隊は合いません」
と隊長にはなしたのですが

「考えなおせ!」の一点張りです。

もう何度も言ってます。正直ストレスで、一日も早く辞めたいのに、
「たとえ辞めるにしても手続きに1年以上かかる」と言われます。

しかも、部隊では自分が辞めたいことが広まって、とても居心地が悪いです。
こんな状態で余計にストレスです。

アドバイスください。

それでも自衛隊続けろみたいなレスはやめてください。
もう夢も希望もないし、結構精神的に限界なんです。

辞めることが決まっても、1年以上かかるって鬱になりそうです。
引用元:https://jobcatalog.yahoo.co.jp/qa/list/1353516863/

現役の自衛隊員です。相談をさせてください。

結論から述べると、退職を受理してもらえません。
先月の試験で昇任試験に合格し、夏から昇任のための教育研修が決まりました。
しかし私は、現在お付き合いをしている方と結婚準備をするため仕事をやめ転居することを考えています。
そのため、中隊長に退職の意思をしめしたのですが、結婚くらいで揺るぐ意思だったのか、それは正当な理由として認めない、と引き止めを食らっています。
また、合格を蹴るということがどういうことか、今後の生活をどうすのかを説教するから恋人を連れてこい(恋人は同じ部隊の人です)、そうでなくては手続きをしないと言われました。
引用元:https://www.blindletter.com/view.html?id=39778

自衛官ですがやはり普通の職業と違い退職届けをだしてもすんなりと受理してもらえませんでした。
上司達は普段クビにしてもいいような言動や仕事への指示を出しているし
ほかの先輩、後輩にも 負担がかかっている。
しかも自分はもう、うつ病寸前で職場に行く気も失せ、食欲もなく、精神的にどんどんおかしくなって
いく状態です、かと言って休むことも許されず自殺するかもしれません。

おそらく上司は退職者をだしたら管理者として自分自身にキズがつくぐらいにしか考えていないだろう
と思われます。裁判などに持ち込んでも退職はできないのでしょうか?
引用元:https://www.justanswer.jp/employment-law/77o56-.html

もともと力関係の強い組織の中で勇気をもって退職を申し出ても、上記のように退職までの期限を延ばされることや、退職届を受理してもらえないという現実があります。また、退職の噂が広まることで、居心地が悪くなり更に心が折れてしまうでしょう。

退職引き止めは自衛隊法違法の可能性もある

自衛隊は一般的な民間企業や他の公務員とは違う特殊な職務内容であるため、労度基準法が適用されず、就業規則もありません。自衛隊の働き方や退職については「自衛隊法」という法律で定められています。

今後退職を考えている自衛官は「自衛隊法」について理解しておく必要があります。自衛隊法を理解していることで、上司から強い引き止めにあっても対応しやすくなるでしょう。

自衛隊の退職について定められた法律は「自衛隊法第40条(退職の承認)」です。

第四十条 第三十一条第一項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。
引用元:自衛隊法

ここで記されている「自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるとき」が退職においての重要ポイントといえます

この退職を承認しないことができる期間とは「有事や災害派遣のとき」を想定されています。つまり、平常業務や訓練においては任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認められません。

もし平常業務の期間に退職を申し出たあなたが上司から引き止められ、その理由として上記を上げて退職を承認されない場合や、引き伸ばされている場合は違法となる可能性があります

また、自衛隊法第40条に記載されている承認されてない場合(有事や災害派遣時)は以下の通りです。

任期制隊員 : 任用期間内において必要な期間
その他の隊員 : 最小限度必要とされる期間

この場合の退職は承認されなくても違法ではありません。

いかがでしょうか。自衛隊法の内容を理解しておくだけでも、退職に向けた希望の光が見えてくるのではないでしょうか。

自衛隊を辞める方法。いつまでに何の手続きをする?

自衛隊の退職方法は民間企業や他の公務員とは違います。手続きの中には法律で何日前まで行うのか定められているものもあります

自衛隊を退職する流れ

自衛隊を退職するまでの流れは以下の4つです。

1. 上司に相談
2. 上申書類の作成
3. 共済組合関係の手続き
4. 身辺整理

自衛隊の退職手続き①上司に相談。良いタイミングはある?

退職の意思を直属の上司に相談します。多くの場合はこのタイミングで引き止めにあいます。上司に相談するタイミングは自衛隊法第40条を参考に平常業務の時にしましょう

自衛隊の退職手続き②上申書類の作成。何日前までに必要?

退職希望日の30日前までに退職願と退職者調書を作成し上申しなければなりません。この期間は規則で決まっているため、早めることはできません。上申までの手続きにかかる日数は所属部隊によって変わってきます。

(退職)
第 28 条 退職(定年及び任期満了による退職を除き、応募認定退職を含む。) を希望する者は、退職願(別紙第 20)を作成し、幹部並びに陸上幕僚長を任免権者とする准陸尉、陸曹及び陸士については、退職希望日の 30 日前までに、 順序を経て陸上幕僚長に1部上申するものとする。
引用元: 陸上自衛官人事業務規則

また、自衛隊法には任命権者についても定めてあります。任命権者は階級によって異なるので確認しておきましょう。

(任命権者等)
第三十一条 隊員の任用、休職、復職、退職、免職、補職及び懲戒処分(次項において「任用等」という。)は、幹部隊員にあつては防衛大臣が、幹部隊員以外の隊員にあつては防衛大臣又はその委任を受けた者(防衛装備庁の職員である隊員(自衛官を除く。)にあつては、防衛装備庁長官又はその委任を受けた者)が行う。
引用元:自衛隊法

自衛隊の退職手続き③共済組合関係の手続き。何日前までに必要?

共済組合の脱退手続きを退職1ヶ月前までに行います。組合を脱退した後は、転職先の健康保険に加入するか、国民健康保険に加入することになります。また、共済組合は最長2年間の任意継続をすることができます。

任意継続を行う場合には条件があり、国民健康保険と任意継続のどちらが良いのかは条件や保険料を比較して検討してみてください。

自衛隊の退職手続き④身辺整理。

退職日までに身辺整理をしておきます。使用予定のない制服はクリーニングに出しておき、整備品も返納します。紛失物がないかどうか確認をする必要があります。

退職日はお世話になった上司や同僚へのあいさつや辞令交付を受けます。また、身分証の返納も行います。

手続きを踏んでもなぜ自衛隊は辞められないのか

手続きはそこまで難しいものではないのに、なぜ自衛隊は辞められないと言われるのでしょうか。繰り返しになりますが、最初に上司に相談したタイミングで「引き止め」にあうからです。

上司にとしても部下が退職を申し出ることで、今後の任務や自身の評価について考えなければいけないので簡単に了承はできません。そのため、正規の手順を踏み退職理由や退職日を明確にしていても、前述した相談のように引き止められてしまうことがあります。

また、上司から威圧的な対応をされてしまうと反論できずに上司の説得に時間がかかってしまいます。自衛隊は任命権者から退職の承認をもらう必要があるため、承認されなければいつまでも辞めさせてはもらえないのです。

自衛隊を退職するためのポイント

退職を承認されてしまえば、それからの退職手続きはスムーズに進めることが出来るでしょう。自衛隊を退職するためのポイントは、退職を上司に相談するタイミングでどれだけ説得することができるかです。

上司に相談した段階で引き止められることを念頭において、「考え直せ」や「手続きに時間がかかる」など理由をつけて承認されない時に、どのように説得させるかが重要ポイントです。

上司からの引き止めに合わないために、自衛隊を退職するためには退職準備をしっかりしておき、上司に相談する段階でそれらを伝えることが出来る状況にしておく必要があります。

転職をする場合は、部隊異動で引き止められる事例もあります。そのため、自分のやりたいことは自衛隊ではできないことを明確に伝える必要があります。転職に向けた資格を取得していることやすでに転職先が決まっていると説得しやすいでしょう。

民間企業への転職をすると収入が減る可能性もあるため、貯蓄がない状況では「もう少し貯金をしてからでもいいのではないか」などと引き止められる可能性があります。自衛隊を退職しても十分に生活していくことは可能であるという説明ができるといいでしょう。

また、転職に対する家族の理解が得られていると、退職は自分だけではなく家族の意向でもあることを伝えることが出来ます。

自衛隊を退職することは公務員としての安定した収入や仕事を失うことでもあります。自衛隊を続けるメリットと、民間企業に転職することのデメリットを理解した上で退職の意思があることを説明できれば、上司も退職を認めざるを得なくなってくるでしょう。

自衛隊を辞めるには、退職代行が一番確実です

入念な退職準備と確固たる意志があり、上司からの威圧的な引き止めにも臆することなく発言をすることが出来る人は辞めることはできるかもしれません。しかし、全ての自衛官がそのような行動をできるわけではないでしょう。

自衛隊を辞めるためには弁護士の退職代行を利用するのが一番確実な方法です。

退職代行は民間企業での退職で利用するようなイメージがあるかもしれませんが、自衛隊を退職するときも退職代行サービスを利用することはできます。とはいえ民間の退職代行サービスを利用することはおすすめしません。

弁護士の退職代行を利用することのメリットは以下の2つです。

1. 代わりに職場と交渉してくれる
2. 最短で退職することができる

代わりに職場と交渉してくれる

民間の退職代行サービスでは退職の意思を職場に伝えることはできますが、職場と交渉をすることはできません。職場との交渉は弁護士しか行うことが出来ない行為であり、民間の退職代行サービスでは行うことはできません。

また、自衛隊の退職は自衛隊法に基づいて手続きが行われるため、法律の知識やノウハウが求められます。そのため、民間の退職代行サービスの中にはそもそも自衛官の退職代行を受け付けていない業者もあります。

自衛隊を最短で退職することが出来る

弁護士は法律のプロであり職場との交渉ができるため、上司からの引き止めにも毅然として対応してもらうことが出来ます。そのため、自身で上司と交渉するよりも早くに退職手続きを進めることが出来ます。

既にパワハラを受けている場合、や上司との関係性から身体的・精神的に疲労している状況で退職の交渉をすることはさらにストレスが蓄積されてしまいます。弁護士が間に入ることで精神的にも楽な状態で手続きを行うことが出来ます。

自衛官の退職代行は弁護士一択

自身で退職の手続きを始めるためには自衛隊法について理解し、転職準備と併行しながら上司からの強い引き止めにも対応しなければなりません。さらに最短で辞めようと思うとそのハードルは高くなります。

平常業務も行いながら退職手続き、上司の引き止めへの対応を行うことは大変であることは想像に難くないでしょう。特に部隊内で過去に強い引き止めにあったケースがあれば、自身の退職を申し出た時も同様になる可能性もとても高いです。

退職代行サービスを利用することで費用面の負担はありますが、迅速で確実に辞めることができる退職方法です。現状、引き止めにあっている場合や、最短で退職したい場合は弁護士の退職代行サービスの利用を検討してみてください。